マンション管理会社のフロント社員は、いつもマンションの管理組合・理事会・居住者の皆さんから、様々な相談ごと、依頼ごと、お願い事項が寄せられ、日々その業務に勤しんでいることかと思います。
それらは、単なる業務、宿題、役割ではありますが、一方で顧客からの期待が含まれているということを考えたことはあるでしょうか。
- その相手の期待を把握できているか。
- 把握できた上で、適切な答えを提示できているか。
これができているかどうかで、仕事の考え方、やり方が違ってきて、将来の結果がガラッと変わってきます。
今回の記事は、そんな「管理会社フロントの仕事のあり方」に焦点を当てた内容をご紹介します。
はじめに
こんちわー居住者さん、何か御用ッスか?
あぁ担当さん。今度私引っ越すことになったの
何か必要な書類とかある?
引越しッスか?んじゃ『転居届』が必要ッスね。
管理員から渡しときますよ。
【その後・・・】
チョット担当さん!この間いきなり自転車の解約通知が来たんだけど、これって何!?
あ~、実はこのマンション、自転車は『実際に住んでる人』しか借りれないんルールなんスよ。居住者さんこの間お引越しされたんで、解約になったんスね。
もう次の人が使ってるからどうにもならないッスね。
それは困るわ…。次に住んでもらう人に貸そうと思ってたんだけど。ルールを知らなかった私も悪いけど、先に言っておいて欲しかったわ。
あ~・・・、あの時自転車のことは言われなかったもので。さーせん
マンション管理会社の担当フロントも、マンションの役員、居住者の方々も、「あの時言っておいて欲しかった」「これに気付いてほしかった」というような、これに似たような経験したことありませんか?
「相手は当然やってくれるものだ」と自分が望んだ以上の事を相手に求めること自体、自分勝手な要求に他なりませんが、とはいえ「プロなのだからこれくらい気付いてよ」と思ってしまうのも人の性。
ですが、こういった気の利き具合があるかどうかが、顧客満足度に大きく影響を与えるのが、サービス業の難しいところでもあります。
フロント社員の方は、↑のやり取りのほかに、こんなこと言われたことありませんか?
お宅らはプロなんだから、プロらしく仕事しろ!
何のためにお宅らに頼んでるのか分からないわ
自分なりに一生懸命仕事をしているつもりなのに、なぜか評価されない。辛いですよね。
休日をつぶし、時間をかけて、深夜まで残業してまで頑張ったのに、出しても触れられもせずゴミ同然に捨てられる。
そんなことがあった日には、
んなコトやってられっかぁああああああああっ!!
と叫びたくもなります。他にも、
- 自分がどうアプローチしても「ダメだ」と言われてしまう。
- 何が悪いのか分からないが、なぜか顧客評価が低い。
- 言われる期限は守った。リクエストにも応えている。必要な回答も用意した。だが、なぜか相手の満足が得られない。
こんな自分の苦労が報われないような思いをしたことは、管理フロントに限らず社会人なら誰でも経験あるはずです。
私も経験があります。これが原因でマジで会社辞めようかと考えた時期が過去にもありました。
ですが、ご安心ください!
相手あっての話ですが、やり方と考え方、アプローチ方法とコツを押さえれば、これらの悩みは解消されること請け合いです。
今回の記事は、10年以上管理業界に身を置く私が体験として身に付けた秘策をお教えします。
この記事はこんな人にオススメ
この記事は
- 自分の苦労が報われない日々を過ごしている社会人の方
- エンドユーザーへのアプローチに悩まれている社会人1~2年目の方
- やるべきことをやっているのに、なぜか顧客評価が低い方
こんな方にオススメです。
- 仕事に対する考え方が変わり、ワンランク上の仕事ができる
- 顧客評価が上がり、仕事がやりやすくなる
- 案件や提案が通りやすくなる
管理会社フロントだけでなく、一般の社会人の方、はたまたサービスを受けるお客様の目線でも「ここをこうしたら良くなる」というように、具体的な改善策の参考になると思います。
これを読んで実践すれば、理事会役員や居住者から気に入られ、ゆくゆくはそれが『信頼』となり、提案案件や相談事などの話が通りやすくなるでしょう。
それでは、どうぞ!
『仕事のやり方・考え方』の結論
簡単に結論をまとめると、このようになります。
それでは内容について、細かく見ていきましょう。
仕事のやり方・考え方のポイント
相手(顧客)を満足させる仕事のやり方・考え方を具体的に見ていきましょう。
相手が求めを“より深く”考えよう
どこの業界でも『顧客のニーズをつかめ』とよく言われます。まさしくその通りで、否定しようもありません。
では、どうやったらその『顧客ニーズ』を掴めるのでしょうか。
考えてみてください。
【Q】
「○○が欲しい」と言われました。その時アナタは、その○○を用意すれば相手は完全に満足してくれるでしょうか?
答えは『否』です。
なぜなら、「相手自身も『自分に必要なもの』を完全に把握しきれていない」からです。
例えば前述【はじめに】でご紹介した担当フロントと居住者さんのやり取りの際、
引越す際の書類をください
(※自分は書類だけ必要と思ってた)
【ニーズの不知】
転居届を渡します
(※転居届と共に自転車解約を伝えた方が良かった)
【察知の不足】
というように、相手方(この場合居住者さん)が、自分が必要とするものを、自分でさえも全て把握しているわけではないということがあるのです。
受け手(この場合管理会社フロント)も、相手の言うことだけを真に受けて要求された物だけ用意しても、相手のニーズに応えることができず「仕事をしても顰蹙(ひんしゅく)を買った」という無残な結果だけが残るわけです。
- 相手がこれを求める理由は何か。
- それは相手にとってどんな影響を及ぼすだろう。
- 関連する要素は何かないだろうか。
このような考えを巡らせることで、相手(顧客やら上司やら取引先やら)から依頼を受ける際、「相手自身も『自分に必要なもの』を完全に把握しきれていない」という心積もりでに接することで、相手の期待値を上回る働きができるようになります。
【さっきの例で言えば・・・】
- 引越すってことは、転居届が必要だな。
(↑できたのはココまで↑) - 転居する時には引越業者が来るだろうから、引越日が決まったら管理員に伝えておくよう言っておこう。
- 引越作業の案内文も必要だろう。
- 引越作業の時の養生は大丈夫かな?
- 引越した後は空室か?それとも賃貸か?
- 賃貸だったら第三者使用届も送っておこう。
- 売却だったら組合員加入脱退届と口座振替依頼書が必要だ。
これくらい発想を膨らませて相手に確認すれば、手続きの抜け漏れも起こり辛く、また相手からも
その手続きは忘れてたわ。じゃ、お願いね
と、気が利くアピールをできるようになります。
要は「気が利く」かどうか、という一言に尽きますが、こういった相手への配慮と、深く洞察しようという意識が必要です。
例え見当違いだったとしても「自分のことを考えてくれてる」という気持ちが伝えられて、心情的にプラスに働くようになるよ!
これを癖付けするだけでも、かなり仕事への取り組み方が変わってくるよ!
「御用聞き」でなく「半歩先」へ
いきなりですが、『三河屋さんのサブちゃん』って知ってますか?
アニメ「サザエさん」に登場する御用聞きのお兄さんです。
昭和の時代、家の裏口から顔を出し、「何かご用立てることはありますか?」と聞いて回る営業マンで、主婦から、お酒やら醤油やらの注文を取り納品するというお仕事です。
ですが今のご時世、「御用聞き」なんて全く見なくなりましたよね。
消えた理由は、今と昔じゃ生活スタイルや住環境、訪問販売への忌避感などの価値観が異なるせいもあるでしょうが、このようなスタイルでは営業として成り立たなくなったのが、御用聞きが消えた証左だとも考えられます。
つまり、「相手が欲しいものを用意するだけでは不十分だ」ということです。
相手の満足度を上げるには、欲しがっているものを用意するだけでなく、
- 相手がこれを求める理由は何か。
- それは相手にとってどんな影響を及ぼすだろう。
- 関連する要素は何かないだろうか。
この考え方を用いて、「相手が気付く前」に相手のニーズを提供する試みをしてみましょう。
・・・そんなの分かるわけないじゃん
と思われるかもしれません。
ですが、ここを考えるか、考えられないかで、仕事のやり方・考え方は大きく異なってきます。
「言われたことの『半歩先』を見る」という意識で考えてみれば、決して難しいことじゃないですよ。
最初から成果を挙げようとせず、まずは自分の考え方を変えていこう!
考え方を変えていけば、自ずと行動に結びつく。それを繰り返していけば、自然と成果にたどり着くものよ。
フロントはコンサルタントと心得よ
マンション管理の担当フロントは、単に理事会や居住者の御用聞きではありません。
それではホントにサザエさんのサブちゃん同様、時代の波に呑まれ消えゆくのみです。
それでは何なのか。答えは「コンサルタント」です。
たんに用事を聞いて答えるだけでなく
- 相手は本当に欲しいものは何なのか
- 今ここに足りないものは何なのか
- 相手は何を不満に思っているのか
相手の言葉、態度はもちろんのこと、周辺の環境、置かれている状況を深く考え、相手の要望を先回りして的確な提案を行うことが求められています。
「管理フロントは、管理組合に『提案』するのが仕事」
と、管理業界ではよく言われています。
「アナタのために」という意志で提案すれば、例え的外れでも評価につながるものです。
それでも旨いやり方ないもんかねぇ
と思われる方は▼コチラ▼の記事をご覧ください。
『「そんなこともあろうかと!」というセリフを言える場面を作ろうと思ったら、どんなネタがあるだろう?』って考えるのがコツだよ。
実際に言ってみると、結構ウケがいいよ!
まとめ!
これまでのお話を整理すると、このようになります。
顧客のニーズをとらえるのは、容易なことではありません。
ただ、「やろう!」と思わないとできないことです。
お客さんからあまり評価されてない。持って行った商談がなかなか旨くいかない。仕事をしててもなぜか褒められない。
そんなことを悩んでいるなら、休憩がてら一度立ち止まって、じっくり自分の仕事ぶりを振り返ってみてはいかがでしょうか。
ではこのへんで。かわぐちろろでした。
かわぐちろろ の【ろろ余談】
私は自己ルールで「そんなこともあろうかと!」 のセリフを月2回使うと決めてました。意外に効果ありますよ。