引越しガチャランキング第2位に挙げられる『自転車置場のトラブル』。
満車問題をはじめとして、昔から現在にわたり続いている、マンション暮らしの悩み・トラブルの代表格です。
今回は、その『自転車トラブル』を解決するコツ・秘策について、前後編にわたってご紹介します。
はじめに
管理会社さん、自転車使いたいんだけど空きはないの?
ないッスね。ずっと満車ですし
えーっ!ウチのコまだ小さくてキャリー付き自転車が無いと困るの
いやぁ~、置き場所ないですし、空き待ちの人は沢山いるし、キャリー付きの自転車となるとラックに入りませんから平置きしか置けませんし、余計に空き待ちがたくさんいますからねぇ。
それじゃどこに置けばいいの? なんとかならない?
置き場所が無いんで何ともなりませんねぇ。あとはご自宅のお部屋の中に置くしかないですよ
さすがにそれは無理ィ・・・!
- うちのマンションは、いつも自転車の空きがない。
- 空きがあってもすぐ埋まって、使いたくても使えない。
- なのにふと脇を見ると、ホコリをかぶった自転車が長年置いていて、使いたい人が使えないのに、使わない人が使っているという、なんともおかしな状況に。
マンション暮らしの人は、こんな思いをしたことありませんか?
ずいぶん昔から現代でも続いている『マンション暮らしのお困りポイント』『引越しガチャ』として上位に挙げられる「自転車問題」。
日本のマンションの多くは、限られた敷地いっぱいに建てられており、十分な自転車置場のスペースを確保できず、台数が足りない、空きがあっても高さや幅が足りなくて置ける自転車が限られる、なんて話をよく耳にします。
しかも最近の自転車は、ママさん御用達のキャリー付き自転車や車輪が太いタイプの自転車、車体は大人用なのに車輪は極小タイプの特殊な自転車etcetc・・・。現場に用意されたラックに入れられないケースが多発しています。
そうなると、その自転車はどうするか。
捨てるか。自分の部屋まで運ぶか。はたまたルールを無視して置場以外に置いてしまいましょうか。
そんなことになれば――
- 通行の邪魔になる。
- 火災時の避難に支障をきたすことになる。
- 見栄えも悪くなる。
- 乱雑に置かれた自転車を晒してマンションの住民モラルが疑われる。
こんなことになりかねません。そんなの嫌ですよね。
私がこれまで担当してきたマンションでは、その殆どで何かしらの「自転車トラブル」を抱えていました。
中には20年以上ずっと自転車の問題が解決できず、半ば諦めていたマンションもあったほどです。
そんなマンションでも、かなり時間が掛かりましたが、一定の解決に導いた『自転車トラブル解決のノウハウ、解決に必要な手順やポイント』についてご紹介したいと思います。
この記事はこんな人にオススメ
この記事は
- 放置自転車が溢れて困っているマンション居住者の方
- 「自転車が停められない!」という苦情を受けてる管理会社のフロント担当の方
- 自転車を止めたいけどなかなか順番が回ってこない方
- 『満車』と聞いているのに、ほこりをかぶった使われない自転車が良い位置に停められてて、なんか釈然としない気持ちの方。
こんな方にオススメです。
- 自転車が必要な人に必要な分だけ使えるようになる
- 見苦しかった放置自転車なくなりスッキリ
この記事を読めば、マンション内の放置自転車、区画外の駐輪自転車が無くなり、かつてそこに在ったスッキリした環境、あるべき姿を取り戻せるでしょう。
それでは、どうぞ!
『マンション自転車問題の解決法』の結論
簡単に結論をまとめると次のとおりです。
それでは内容について、細かく見ていきましょう。
自転車置場トラブル ~発生理由と法的解釈~
自転車置場が足りない理由
自転車置場が足りない理由?
そんなの、置ける台数が少ないからに決まってるじゃない
そう思われる方がほとんどだと思います。
ですがそれは『正解』ではありますが、『根源的な理由』はもっと深いところにあります。
自転車置場が足りない理由、『台数が少ないワケ』として考えられる要素は次のとおりです。
- 家族構成の変化による使用者数の増加
- 使用者層の自転車への遷移
- 竣工時に自転車の必要数を行政の基準ぎりぎりに設定したため
理由①:家族構成の変化
子供が生まれた等の家族の増加、保育園生⇒幼稚園生⇒小学生 の成長過程に伴い、自転車なし⇒子供用自転車⇒大人用自転車 というような車両の入替えによって生ずる区画(移動先)の不足が挙げられます。
理由②:使用者層の自転車への遷移
これまでは自家用車、バイクを使用していた人が、家計のランニングコストの抑制や車両の使用頻度の低下により、車やバイクその者を手放し自転車に切り替える方が見られることです。昨今の健康ブームに伴いサイクリング用の自転車を購入される方が増えてきたのも要因として挙げられます。
理由③:行政の基準ギリギリに区画数を設定
駐車場と同じく、自転車置場にも「最低○台分の自転車置場を設置すること」という『附置義務』が設定されており、売主や設計会社は当然その規定を守りマンションを設計します。
しかしながら当然売主は、限られた敷地をいかに有効利用するか、いかに利益を上げられるような作りにするか、という考えを持っています。
ですので、「居室部分やエントランスを広く取れるよう、スペースを食いつぶす自転車・バイク置場はできるだけコンパクトに収めよう」という設計思想のもと、「定められている附置義務ぎりぎりの台数」の区画しか用意されない、というケースがほとんどです。
あれ? 『附置義務』って「その建物に対して必要な台数」なんだから、附置義務が守られてれば大丈夫なんじゃない?
そう思われる方もいるでしょう。
しかし『附置義務』とは、あくまで『最低限の台数』であって、『使う側にとって十分な台数』ではないケースが多く、現に自転車の附置義務の規定は「1居室に1区画以上」(場所によっては『1.2区画以上』)とだけ定めているケースが殆どで、置き方(平置き○台、ラックの場合○台)という決め方もされておらず、単に台数しか決められていません。
自転車の停め方にも「平置き」「固定ラック」「スライドラック」「上下可動ラック」など色々ありますが、建築スペースを確保したい売主、設計会社は、台数を稼げる可動式ラックを率先して採用します。
すると―――
スライドラックじゃキャリー付き自転車が置けない
可動式ラックじゃ子供用自転車をレールに乗せられない
――っという状況が生まれるわけです。
行政の方でも、暮らす人の生活様式まで考えた設置要綱を作ってほしいよね
だけどマンションは10年も経てば年齢層が変わってくるから、基準を作ろうにも作れない事情があるんだろうね
指定の場所以外には置いちゃダメ
当たり前のことですが、自転車置場以外に自転車を置いてはいけません。
理由は主に次のとおりです。
- 管理規約(使用細則)で禁止されているから
- 火災などの緊急時、避難の邪魔になるから
- 消防法令に障るから
管理規約(主に住宅使用細則や自転車使用細則など)で、『廊下などの共用部分や敷地に私物を置いてはいけない』『自転車は決められた区画以外に停めてはならない』と決められているのが一般的です。
その他に「火災時に避難の阻害になる」という理由がありますが、消防法令(火災予防条例)でも「避難経路に物を置いてはいけない」と規定されていることを根拠とします。
火災予防条例第54条第1号(避難施設の管理)
令別表第1に掲げる防火対象物の関係者は,避難施設を次に定めるところにより,有効に管理しなければならない。
出典:火災予防条例における公表の対象となる違反の条文の抜粋
(1) 避難施設には,火災の予防又は避難に支障となる施設を設け,又は物件を置かないこと。
◎避難施設避難障害・物件存置[火災予防条例第54条第1号]
避難施設に火災の予防または避難の支障となる、売店、自動販売機、暖冷房の設備・器具等の施設ならびに看板、商品、机、いす、棚、大道具、小道具等の物品を置くことなどを禁止した規定に違反した場合に該当します。
出典:消防関係法令の違反に関する解説/東京消防庁
自転車置場に置き場所が無い自転車は、廊下や他の敷地の縁などに置くこともできませんので、あとは自宅の部屋の中に置くしかありません。
そういう場合、こんなふうに玄関先のポーチ(アルコープ)に置かれているケースを目にします。
(▼参考写真▼は↓コチラ↓)
玄関扉前のスペースと共用廊下を隔てる扉が付いて区画されている部分が『ポーチ』
スペースがあるだけで扉で区画されていなければ、くぼみ部分を『アルコーブ』と呼びます。
あたしんちしか使ってない場所なんだから、ポーチに置いてもいいじゃない!
こうおっしゃる方がいますが、それは間違いです。
玄関先のポーチ(アルコーブ)は、『共用部分』です。
扉や柵で区画されていて、その居住者しか使っていない場所を「専用使用部分」と呼びます。ですがそこは「共用部分に該当するけど、アナタだけが使っていい場所だよ」とされているだけで、「アナタの自由に使っていい場所だよ」「アナタの持ち物だよ」ということではありません。
自分専用の場所といえど「自分勝手に使っていい」というわけではない、ということです。
「共用部分」にあたる以上、私物を置いてはいけませんので、当然自転車を停めちゃいけません。
よく生協の箱とか傘立てとか置いてる人がいるけど、あれはやっちゃダメな事なんだよ
実はベランダやバルコニーも「専用使用部分」だから、厳密には私物を置いちゃいけないことになってるよ。
不要自転車でも、捨てたら法律違反
自転車置場が満車で空き区画を作ろうとした時、取れる方法は「今ある自転車を無くすか」「置き場所を増やすか」の2つしか基本的にありません。
そんなとき、殆どのマンションでは駅前の放置自転車を撤去するがごとく―――
「事前予告して反応なければポイ」でいいんじゃね?
というふうな「不要自転車を廃棄しよう」という動きになるでしょう。
しかし、ちょっと考えてみてください。
個人の持ち物を勝手に処分することは許されるんですか?
法律の中では『自力救済の禁止』という考え方があります。
自力救済(じりききゅうさい)
民事法の概念での自力救済とは、何らかの権利を侵害された者が、司法手続によらず実力をもって権利回復をはたすことをいう。(略)これを規定した条文はないが、現代の民事法では例外を除き禁止されている。
出典:Wikipediaより一部抜粋
平たく言うと、「自らの権利を強制的に実現するためには、自分の力(自力)で解決させてはならず、裁判所の手続を経なければならない」ということです。
また放置自転車といえど『個人の所有物』です。
個人の所有物を、「自分(たち)の邪魔になるから」という理由で捨てる行為は、所有物の簒奪(さんだつ)であり、個人の権利を著しく侵害する行為に他ならなりません。
あんなホコリまみれの自転車を捨ててやったんだ。感謝こそすれ恨まれる筋合いなどない!
ゴミを捨てたワシらが何で悪者扱いされなきゃならんのだ!?
と思われるかもしれません。そう言いたくなる気持ちは分かります。
ですが、他人の持ち物を無断で捨てるという『所有権を侵害』に加え、法に則らず勝手に自分ルールで執行したという『自力救済の禁止』に抵触しており、法的には完全に悪者になってしまいます。
かくいう駅前の放置自転車を処分している行政はというと―――
このような法律解釈の基にしているほか、
自転車の安全利用の促進及び自転車等の駐車対策の総合的推進に関する法律(一部抜粋)
第六条 市町村長は、駅前広場等の良好な環境を確保し、その機能の低下を防止するため必要があると認める場合において条例で定めるところにより放置自転車等を撤去したときは、条例で定めるところにより、その撤去した自転車等を保管しなければならない。
出典:e-GOV 法律検索
2 ――市町村長は、当該自転車等を利用者に返還するため必要な措置を講ずるように努めるものとする。
3 市町村長は、――当該自転車等を売却し、――当該自転車等につき廃棄等の処分をすることができる。
4 ――公示の日から起算して六月を経過してもなお――返還することができないときは、当該自転車等の所有権は、市町村に帰属する。
このような法律を定め、放置された自転車を市町村長の名のもとに廃棄・売却できることとなっています。
一方マンション管理組合にはそのような権利もなく、後ろ盾となる法律もないので、原則的には捨てることすらできないというわけです。
自力救済ができないから、原則的には「持ち主自身で捨てさせる」か「裁判所から『捨てろ』と命令される」のどちらしか手立てはないよ!
なんだか釈然としないだろうけど、もし自力救済が認められたら「ヤクザ」や「反社」が自分の理屈で好き勝手しても、内容によっては認める余地を生んでしまうことになりかねないような世の中になってしまうから、すごく重要な考え方なんだよ。
まとめ!
ここまでの内容をまとめてみましょう。
自転車置場のトラブルについての結論は次のとおりです。
ここまでは要点1~3まで紹介してきました。
後半の記事では、具体的な現場の対応、空き区画を増やすための方法やルール作りのポイントについて紹介します。
続きの記事は▼コチラ▼
ではこのへんで。かわぐちろろでした。
かわぐちろろ の【ろろ余談】
自転車マンガは大好物です!