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【新人向け】マンション漏水トラブル対応!責任問題を起こさないための漏水対応ノウハウ~実践編~

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「マンションでは漏水が付きもの」

一般の方にはあまりなじみがないかもしれませんが、マンション管理業界では当然のことのように語られているこのキーワード。

これを否定する管理フロントはモグリと言ってもいいでしょう。それくらい「マンションあるある」なことで、大抵のマンションの管理フロントにとっては「あぁ、今度はこのマンションか」と思うくらい日常茶飯事な事故です。

しかし、その「マンションあるある」なトラブルでも、実は殆どのマンション管理会社では、その対応要領はマニュアル化されておらず、担当者の「経験則」によって対応がなされていることは、あまり知られていません。

今回の記事では、その漏水対応の順序とポイントについてご紹介します。

はじめに

居住者さん

ちょっと管理会社さん!
ウチの洗面所の天井から雨漏りしてるんだけど!

管理会社フロント

え”っ、マジッスか? 上の人には声掛けしましたか?

居住者さん

いやまだだけど・・・
それって私がいかないとダメの?

管理会社フロント

ボクも緊急業者も手一杯で、最短明日でないと緊急業者が行けないんですよ
お願いします

居住者さん

こんなことで上の人に声掛けないといけないなんて。
管理会社はこんなこともしれくれないの・・・?

管理会社フロント

さーせん

「マンション管理あるある」なトラブルの中で5本の指に入るであろう『漏水トラブル』

いざ水を漏らしてしまった(または漏水の被害を受けた)とき、どう対応すべきかご存じないのではないでしょうか。

  • 漏水を起こしてしまった時、まず最初にやることは?
  • 直すにしてもどこをどうやって直せばいい?
  • 相手への弁償はどうする?
  • どうやって相手と交渉する?

これら全部、正確・迅速に判断して、すぐに行動に移せる人は少なく、大抵の場合は管理会社に対応をお願いするケースがほとんどだと思います。

ですがその管理会社も、漏水対応はマニュアル化されておらず、殆どの場合担当フロントの経験則でしか現場対応がなされていないという実情があるのです。

歴戦の管理会社フロントならまだしも、新入社員や経験の浅い担当フロントだと、何をしていいのか分からず、被害と共に入居者クレームも広がること請け合いです。

今回の記事は、10年以上管理業界に身を置く私が『漏水発生時の対応フロー』『漏水加害者/被害者両方に取るべき対応』についてご紹介します。

この記事はこんな人にオススメ

この記事はこんな方にオススメです。

  • 漏水を起こしたことがあり、解決までかなり時間が掛かってしまったという方
  • 漏水を起こしたことはないが、どう対応するのか分からない方
  • 漏水対応をしたことがない社歴の浅い管理会社フロント社員
  • いざ漏水が起こった時、トラブルなく正しい対処ができる
  • 漏水対応の方法を体系的に学べる

この記事を読めば、あなたは『漏水マスター』です。

今後漏水が起こっても、この記事のとおりに動けば間違いありません。

また、漏水の被害対応のみならず、加害者/被害者へのフォローについても学べます。

漏水が起こった際、被害を受けた方も、水を漏らした加害者も、被害の復旧や補償、互いの相手への心理的な軋轢(ご近所付き合いでの心の溝ができないか)など、多くのストレスにさらされます。

そのストレスが原因で、居住者同士(時には管理会社にヘイトが向いたりなどして)デカイトラブルに発展することが多くありますが、正しい対処、正しい作法を知っていれば、ご近所付き合いにヒビが生まれることはなくなります

管理会社目線で言えば、それらトラブルを事前に回避し、迅速・かつ正確な対応ができれば、トラブル解決を図れるうえに、顧客評価も得られることでしょう。

まさに『雨降って地固まる』というやつです。(漏水だけに)

また、この漏水対応は、殆どの管理会社ではマニュアル化されておらず、殆どの管理担当フロントは過去の『経験則』で対応しているに過ぎず、社歴の浅い新入社員は「経験するまで何も知らない/何をしていいのか分からない」という状況に置かれているのではないでしょうか。

この記事では、そんな社歴の浅い管理フロントにも理解できるよう、漏水対応を体系的に学べる教材としても作成しています。是非ご活用ください。

それでは、どうぞ!

『漏水トラブルの対応マニュアル』の結論

簡単に結論をまとめると次のとおりです。

  • 漏水が起こったら、できる限り現場に行こう!
  • 被害者/加害者の気持ちを汲んで、急いで直す手配しよう。
  • 本復旧までにはかなりの時間が掛かる。日程調整はスピードとスケジュール管理が重要。

それでは内容について、細かく見ていきましょう。

漏水トラブルの対応マニュアル

配管の漏水

漏水対応の大まかな流れ

漏水が起こった時の一連の流れは次のとおりです。

漏水発生時の大まかな流れ

  1. 現場確認
  2. 漏水原因調査(進入口の発見)
  3. 仮補修(とりあえずの止水)
  4. 原因箇所の修理
  5. 被害箇所の修理

①現場確認

漏水の一報が届いたら、できる限り急ぎで現場に向かいましょう

通常なら漏水専門の緊急対応業者を手配して②漏水原因調査や③の仮補修まで行ってもらうのがセオリーです。

被害者側については、家や家財が水浸しになった被害のほか、補修完了までそのまま(もしくは仮補修)のまま何日も過ごさないといけないなど、かなりのストレスがあること。

加害者側はについては、(その人に過失があるにしろ無いにしろ)ご近所さんに迷惑をかけてしまった負い目や、自分の家の水の出どころの補修、迷惑をかけたお宅への賠償など、金銭的にも精神的にもかなりの負荷が掛かっていること。

この事を鑑み、少しでも寄り添う姿勢を見せることが管理会社に求められることでもあります。

今やってる仕事をほっぽり出して現場に行くことになりますが、初期対応のよさをアピールすることで、今後の入居者対応を穏便に・かつスムーズに進めることができます。

たとえ自分は何もできなくても、『駆けつけてくれた!』っていう事実だけで相手に安心感を与えられるよ!

漏水が起こったら、できる限り現場に行こう!

②漏水原因調査

漏水が発生したら、当然ですが「水の出どころ」を探る調査(漏水原因調査)を行います。

主な方法は次のとおりです。漏水の現場状況に応じて色々なパターンに分かれます。

漏水原因調査の代表例

  • 聞き取り調査
     ⇒ 漏水した範囲、時期、勢いなどを聞き取り調査し原因を探る。
      (※大抵の場合聞き取り調査であたりを付けることが多い)
  • 目視確認
     ⇒ 目で見て水の出どころを探る。
      (※見えない箇所は壁や天井を開口することもある)
  • 機械調査
     ⇒ 屋根裏、軒下など、目の届かないところを探る。
      (※ファイバースコープ等)
  • 散水試験
    ⇒ 壁・天井部など、水が入ったと思われる箇所に散水
      (※雨漏りなどが疑われる時に実施)
    ⇒ 色水を使って漏水箇所を特定する方法もある。
  • 耐圧試験
     ⇒ 水道管に圧力計を接続してメモリの推移をみる。
      (※圧力が下がったら、水道管から漏れ続けてると分かる)
  • 排水試験
     ⇒ 排水溝に水を流し、再度漏水するか探る。

給湯機に繋がったお湯が流れる水道管は『銅管』で、普通の給水管に比べてかなり劣化しやすくて、ピンホール漏水(小さい穴が空いて漏水する事故)が起こりやすいよ!

このように、漏水調査は色々な方法がありますが、目に見えないほんの小さな穴からでも水は入って来るため、見つけられないこともしばしばあります。(特に壁面からの雨水の浸入や、隠ぺいされた排水管などは顕著)

その場合は、怪しいところを補修 ⇒ しばらく様子見。もし再度漏れたら別の怪しいところを補修 ⇒ 様子見を繰り返すなどの対処療法しかないのが現実です。

③仮補修

漏水の原因調査がひと段落したら、本復旧まで部材の調達や人の手配などで時間が掛かるため、いったん被害箇所や原因となった箇所の止水、現場の養生などの仮補修を行います。

漏水が起こったからといって、別のところに引っ越すわけにはいきません。

いつもどおりにとはいかずとも、本復旧するまでの間でも生活できるよう「とりあえず」の補修をしておこうというわけです。

配管の仮補修イメージ

配管の仮補修
漏水箇所にテープを巻いて止水
テープ補修材の商品

出典:マホータイ&オリステープ/㈱折原製作所

テープを巻くだけで配管の止水ができる補強材があります。

水が噴き出した配管は交換する必要がありますが、緊急出動した当日に交換するなんてできませんので、とりあえずテープを巻いて水漏れを防ごうというわけです。

見た目は心もとない感じはしますが、意外と暫くは持ちます。

漏水被害箇所の仮補修

漏水対策用のシート
出典:美観を損なわずに漏水対策ができる専用シート/日経XTECHより引用

被害状況や漏水量にもよりますが、一旦養生材で蓋をする、水がまだ排水しきれていない等の場合は、漏斗状に水を誘導するなどの措置をします。

それ専用の商品も市販されてたりします。

漏水被害を受けた人は、こんな状態で直るまで我慢して日常生活を送らないといけないんだ!

考えただけでもストレス溜まるね!

漏水仮補修は単なる時間稼ぎ!
被害者/加害者の気持ちを汲んで、急いで直す手配しよう

④原因箇所の補修~⑤被害箇所の補修

原因箇所や被害箇所の補修を行うには、再度内装業者(漏水箇所が外壁や屋上からの雨漏り、埋設配管などの場合は建築業者)が現場を見て、必要な材料、寸法の測定などを行う必要があります。

漏水当日に対応を行った業者がそのまま補修作業を行えるのなら時間短縮できるのですが、大抵の場合、「緊急対応班」「補修対応班」と別々になっているケースが多いです。従って―――

漏水発生

現場対応(仮補修)【訪問1回目】

本復旧のための現場確認【訪問2回目】

本復旧の実施【訪問3回目】

このように、最低3回の現場訪問が必要となります。

加害者/被害者両方の日程調整が必要となりますし、漏水による被害者/加害者の不便な生活を解消するためにもスピードが求められますので、より一層のスケジュール管理が必要となってきます。

被害範囲が少なければそんなに時間も労力も掛からないけど、「原因箇所がハッキリしない」「被害範囲が広くて部材や人員の手配に時間が掛かる」なんてこともザラにあったりするよ!

時間が掛かると、それだけ加害者/被害者双方にストレスが溜まるから、ちゃんと進捗の共有や連絡をマメにとったりしてフォローしなきゃクレームに繋がるから注意!

本復旧までにはかなりの時間が掛かる。
日程調整はスピードとスケジュール管理が重要

まとめ!

ここまでの内容をまとめてみましょう。

『漏水トラブルの対応マニュアル』についてまとめると次のとおりです。

  • 漏水が起こったら、できる限り現場に行こう!
  • 被害者/加害者の気持ちを汲んで、急いで直す手配しよう。
  • 本復旧までにはかなりの時間が掛かる。日程調整はスピードとスケジュール管理が重要。

今回の記事では、原因調査~復旧まで、実務的な流れをご紹介しました。

しかし漏水事故は、単に「水で濡れた所を直せばいい」というわけではありません。

私財を水でぬらした被害者。

自分の意志に関係なく同じマンション住民に迷惑をかけてしまった加害者。

それらの方のメンタル面でのフォローを同時並行で行えて初めて「漏水トラブル対応」を行ったと言えるわけなのです。

その心構えについては▼コチラ▼の別記事にまとめていますので、よかったら併せてご覧ください。

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ではこのへんで。かわぐちろろでした。

かわぐちろろ の【ろろ余談】

かわぐちろろ

一番困るのが『原因不明』な漏水。ですが意外と多いんです。
対処療法で修理を繰り返すしかなく、止まったと思ったら数ヵ月後に再発して、出たと思ったらなぜか止まり、以後台風が来ても漏水が起こらない。

これも「マンションあるある」。恐るべし・・・。