「理事長」「副理事長」「会計」そして「監事」
マンション管理組合の役員はこれら役職につき、それぞれ与えられた役職のお仕事を行います。
その役員の中では、名前のとおり『理事長』が一番偉く、一番強い権限を持っていると思っている方が多いですが、実は理事長よりも強い権限を持った人がいます。
それが『監事』
今回は、その監事についてご紹介します。
はじめに
さぁみなさん、新しく役員メンバーがそろったことですし、役職を決めましょう
役職って何があるの?
ん~、理事長さんと副理事長さん、会計に、それと「監事」ですねぇ
ん~、理事長さんや会計さんって名前からして想像つくけど、監事って何する人なの?
何って、「監事」は監督役ッス
・・・よく分からないわね。監督役って、具体的に何をどうするの?
このブログで以前ご紹介した記事のとおり、理事会の理事ではないため理事会に出席を強要されることもなく、理事会のお仕事をする必要がないため、監事は他の役職と比べて「一番楽」なお仕事です。
ですが、実は理事長含め、他の役員の中で最も強い権限を持っていることは、あまり知られていません。
そんな実感がないものですから、
- 何のために監事はいるの?
- 具体的に何する人?
- いる意味あるの?
などと思われてしまいがちです。
管理規約で「監事は~~」と色々書いていますが、具体的に何をどうする役職なのか、説明できる人はあまりいません。
今回は、私の長年のフロント職の中で経験した事例を基に、具体的な監事のお仕事内容、活躍事例についてご紹介します。
この記事はこんな人にオススメ
この記事は
- 「監事って何する人ぞ?」と、存在の意味をよく分かっていない理事会役員の方々
- 「監事が監事として仕事してる事例って何」と聞かれて答えられない管理会社フロントの方
こんな方にオススメです。
『役員とは何?』や『役員ってなにするの?』というかたは、まずはコチラの記事をご覧ください。
それでは、どうぞ!
『監事という役職』の結論
簡単に結論をまとめると、
このようになります。
それでは内容について、細かく見ていきましょう。
監事の仕事内容について
監事の仕事内容についてご紹介します。
監事とは
マンションの管理規約では、監事は以下のように定義されています。
第41条(監事)
1.監事は、管理組合の業務の執行及び財産の状況を監査し、その結果を総会に報告しなければならない。
2.監事は、いつでも、理事及び第38条第1項第二号(理事会が採用した職員)に対して業務の報告を求め、又は業務及び財産の状況を調査をすることができる。
3.監事は、管理組合の業務の執行及び財産の状況について不正があると認めるときは、臨時総会を招集することができる。
4.監事は、理事会に出席し、必要があると認めるときは、意見を述べなければならない。
5.監事は、理事が不正をし、もしくは当該行為をする恐れがあると認めるとき、又は法令、規約、使用細則等、総会の決議若しくは理事会の決議に違反する事実若しくは不当な事実があると認めるときは、遅滞なく、その旨を理事会に報告しなければならない。
6.監事は、前項に規定する場合において、必要があると認める時は、理事長に対し、理事会の招集を請求することができる。
7.前項の規定による請求があった日から5日以内に、その請求があった日から2週間以内の日を理事会の日とする理事会の招集の通知が発せられない場合は、その請求した監事は、理事会を招集することができる。
引用:国土交通省 マンション標準管理規約(単棟型)
主な内容を挙げてみます。
第1項
管理組合(理事会)のやってること(業務の執行)や金の使いよう(財産の状況)が良いようにできてるか調査して総会で発表するお仕事。
これは多くのマンション管理組合の監事が、平時から行っている業務です。
毎年行われる通常総会の第1号議案(業務報告、決算報告)の際に監事が発表する内容ですね。
主な内容を挙げてみます。
第2項
理事(または理事が寄こしたお手伝いさん)が不正をしてないか調べられる。
理事長含め、理事が不正(金の使いこみや不正引き出し)などしてないか、監事の権限で、いつでも調査を入れることができます。
もちろん、理事にそれを断る権限はありません。
(※「自分のことを調べるな!」なんて言われて断ることができたら、不正し放題ですからね。)
第4,5,6項
- 理事がヤバイことをやってた(やろうとしてる)事が分かったら、監事は理事会に報告しないといけない。
- 理事のヤバイことを報告するため、理事会の開催を請求できる。
- 理事長がそれに従わない場合、監事の独断で理事会を開ける。
理事会を開く際には、理事長が「理事会開くよ」と他の理事に呼び掛ける必要があります。
ただ、「理事が不正をした時(不正をしようとした時)」に監事が
理事の●●さんが不正してるよ。それを他の理事にチクりたいから理事会開いて
と言っているのと同じですから、往々にして開かれないケースが考えられます。
(※ましてや、その不正理事が『理事長本人』だったらなおさらですね。)
そういう事を想定し、理事長が開こうとしないとき、監事の独断で理事会を開き、不正疑惑を暴露することができるというわけです。
第3項
管理組合(理事会)のやってること(業務の執行)や金の使いよう(財産の状況)がヤバイと思ったら、監事の独断で臨時総会を開催できる。
通常、総会を開く際には、「理事会で『総会開くよ』という決議」を行う必要があります。
たとえ理事長でも勝手に開くことはできませんし、ちゃんと「理事会」を手続き分で開催し、他の理事のOKを取り付けないと開けません。
そんな面倒な手続きを経ないと通常開けない総会を、監事は、誰のOKを取る必要もなく自分の独断で開くことができます。
もちろん、例え他の理事全員が反対しても、監事の総会招集を止めることはできません。
第4~6項で「理事会で不正をチクるよ」と言っても理事会が開かれない(または理事会でチクっても効果がない)という場合を想定し、理事会に見切りをつけて
この理事会はダメだ。総会で事を大っぴらにしよう
ということができるわけです。
もちろん、理事会の開催請求をせずいきなり総会開催をすることもできるよ!
ま、滅多にないけどね
監事は何のためにいる?
世間一般では、監事は『理事のお目付け役』と言われます。
まさしくその通りなのですが、もっと言葉を選ばず表現すると、監事は
理事の不正の暴露役
これに尽きます。
では『不正』とはどんなものがあるか見てみましょう。
不正の代表格は、やはり『金』
理事の不正と言えば、やはり『金(かね)』ですね。
殆どのマンションでは、いつも何事もなく平和に運営がされており、みんなから集めた管理費や修繕積立金を節約しながら使われています。
ですが、やはり『金』が絡むと狂う人間が一定数いるもの。
毎年のように「理事長の不正着服」「理事と工事業者間での不正ディベート」「会計担当が預金を不正に引き出し」など、この手の金銭事故は枚挙に暇がありません。
参考:「マンション管理費横領」が全国で続発!7億使い込んだ理事長も
言葉を選ばず言うと、要は犯罪者です。
犯罪を行った者(もしくは疑わしい者)は、自分の身を守るために、その犯罪行為を隠しに動くでしょう。
そんなものを相手に、規定が邪魔して深掘り調査ができなかったら、被害が拡大したり、証拠を隠滅されたり、犯人に逃げられたりし、被害を防止したり、被害の補填をすることもできなくなります。
それを防止するため、『お目付け役』である監事にかなり強い権限を与えたという経緯があるのです。
もちろん管理会社の担当フロントや管理員の不正着服や横領もいっぱいあるよ!
人間、金が絡むとロクなことがないね
決まったことを覆す身勝手行為
「不正」と呼ばれるものは、なにも金絡みだけではありません。
運営上「これしちゃダメだろ」というものも、広い意味で「不正」とみなせます。
例えばこんな内容です。
総会で「内容は理事会で決める」という内容で決議したにもかかわらず、理事長が理事会抜きに勝手に全てを決めて、業者と契約まで交わした。
総会で「A社に発注する」と決めたにもかかわらず、理事会で別の業者に発注する決議をして、実際に発注した。(別業者に発注しなければならない特別な理由は無い)
理事会で反対否決された内容なのに、理事の一人がそれを無視して事を進めた。
理事会で「植栽業者は相見積をとってから、理事会で話し合って決めよう」としたのに、理事が勝手に植栽業者を連れてきて植木の剪定を行った。
このように「決まったこと(規約や細則で決められたルール)」に反して事を進めたケースは、『業務の不正』としてみなされます。
理事会や総会の決議に反することをやったらダメだけど、たとえ違反でも「運営上やむなく行った措置」まで『不正』とするのはやり過ぎだよね。
何事も程度問題ね
問題発生時の監事の対処
理事長が不正を働いた・・・。実際に何をすればいいの?
実際に理事が不正を働いた場合、監事の出番です。
こういう場合、監事が先頭を切って事態の解決に動かなければなりませんし、実際に動けるのは『監事』ですから、組合員全員から「監事の働きぶり」に期待が向けられるでしょう。
でも、実際に何をどう行動すればいいかなんて分かりませんよね。
そういう時こそ管理会社の出番です。
問題解決には、最低でも以下の内容をちゃんと整理して進めなければなりません。
- 【問題の整理】今の状況は何がどう悪いのか
- 【原因の整理】原因は何か
- 【経緯の整理】どのようにして今の状況になったのか
- 【今後の対応】問題解決のため、今後何をするのか
- 【要素の整理】そのためには何が必要か
それをノウハウのない方が一人で進めるのは至難の業。
まずは専門家である管理会社に相談し、事態の解決を図りましょう。
一人でやろうとすると旨くいかないことが多いよ。
『餅は餅屋』って言うし、マンションのことで困った時は管理会社に相談しよう。
弁護士やマンション管理士に相談しても、彼らは自分たちのことを何も知らないから、余計に時間もかかるしお金もかかるよ。管理会社なら相談料はタダだしね。
具体例は内容も結果もえげつない
マンションは集合住宅です。
そこには「ご近所づきあい」というものがありまして、殆どの方は「近所の人と波風立てたくない」と考えます。
ですので、監事が理事会をバッシングするために動いた~、なんて事例は殆どありませんし、私も長年マンション管理に携わってきましたが、このような事例に直接携わったことはありません。
ですが、少ないながらも事例は存在します。
直接携わっていないながらも、間接的に見聞きした事例をご紹介します。
【事例1】理事長の管理費着服
会計の動きに不審を感じた監事が理事長に通帳の引き渡しを要求。
当初拒否していたが、ややもして通帳の開示を承諾。確認すると、理事長は在任中長年にわたり管理費を着服していたことが分かり、監事は理事長の解任請求をするとともに、着服した理事長に損害賠償請求、過去の監事に対し注意義務違反と賠償責任請求の裁判を起こした。
【事例2】理事と特定業者との癒着
理事会で修繕工事を依頼する際、A・B業者の競り合いとなったが、ある理事αがB業者を推薦。結局金額の安いA業者となったが、土壇場でB業者がA業者より安い金額を提示し、それを理由に理事αはB業者を推し修繕工事を発注。
工事中、B業者がかなり高額な追加工事を提案してきたが、承認しない場合、工事を中止し実施分を支払うよう理事会に詰め寄ってきた。B業者を不審に感じた監事がB業者に詰め寄ると、B業者は理事αに工事受注の紹介料を払うために金額を釣り上げていたことが分かった。
事態を重く見た監事は臨時総会を開催し理事αとB業者との実態を報告。理事αは役員を罷免された。
あんまり細かく書くと特定されそうなのでここまでとしますが、携わった事例いずれも『不正を行った役員の罷免』が行われています。
傍から見れば、監事のやっていることは不正を公衆の面前で暴露する行為ですから、「みんなに言ってそれまで」で済ませられないでしょう。
仕方のないことかもしれませんが、考えてみればえげつないですね。
まとめ!
監事の仕事をまとめると、次のとおりです。
実際にやることは「公衆の面前で不正社の悪事を暴露する」という仕事です。
正義に準じた行為とはいえ、同じマンションに住む人を名指しで批判するのは、考えるだけでえげつないですね。
人を人前で公然と批判する。やり方一つ間違えると”私刑”になりかねないね
でも、ここまでの決まりを作らないといけない事情がマンションにはある、という事実も重く受け止めなきゃいけないわね。
ではこのへんで。かわぐちろろでした。
かわぐちろろ の【ろろ余談】
平和に行きましょう、えぇ