なぜこのマンションは、こんなに理事会が多いんだ…
多くのマンション管理会社フロントの方の大きな悩みの一つに挙がるかと思います。
マンション管理組合の役員の皆さん、管理会社フロントの皆さんにお伺いします。
マンション管理組合の理事会って、年に何回行ってますか?
別に考えたことないわね。理事会って、しなきゃいけないものじゃないの?
うちは毎月やってる。昔からそうなんだからこれからもそうするべきだ!
と、このように特に考えなく、「ずっと前からこうしているから、今も続けてる」と、過去の慣例を引きずって思考停止していませんか?
私がこれまで携わってきた理事会でも、きちんと目的をもって理事会の開催頻度や年間スケジュールを立てているところは意外と少なく、
殆どが「なんとなく」で運用されていて、
理由を聞くと「昔からこうだから」というのが殆どです。
それってムダな会議じゃありません?
「無駄をなくそう」「効率化しよう」と言われていつつも、自分の足元の業務を見直していないのではないでしょうか。
そんなわけでこの記事では、無駄な理事会の業務を見直して理事会の回数を減らす方法についてご紹介します。
はじめに
いや~、ここのマンションは理事会が多くて大変だわ。なんとか減らしてもらえいないかなぁ
へっ!? 理事会って毎月しなきゃいけないんじゃないの!?
(あ、やべっ!心の声が漏れて…)
あーいや~その…、理事会の回数はマンションの要望に応じてというか、昔からの慣例というか、特にルールは決まってませんよ
そうなの?私も理事会のために休みを調整しないといけないから困ってるのよ。何とかなんないものかしら。
理事会は、マンションの管理運営にとって大変重要な会議です。
ですが、理事会はあくまで「適正なマンション管理を実現するための手段(装置)」に過ぎないのであって、その目的とは裏腹に、『開催すること』自体が目的となって理事会を行っているケースが散見されます。
これはまさに『目的と手段が入れ替わっている』という状態に他ならず、理事会役員のみなさんの負担を増やすだけです。
一方、マンション管理会社のフロント視点で見れば、理事会の開催頻度によって、当然そのフロントの業務負荷は大きく左右されます。
実際多くの管理会社では、フロント一人の担当数を「理事会の開催頻度の大小」で調整されている実態があり、担当者の業務負荷と仕事の精度を大きく左右します。
このように、理事会開催頻度というものは、マンション側にも、管理会社側にも、現場の人間の負担度合いに大きく関わってくる重要案件です。
にもかかわらず、実際の現場では
昔からこうだから
という安易な理由で見直しがされていない(しようともしない)悲しい実態が、かなり多くのマンションであるのです。
この記事では、これまで私が理事会に携わってきた中での実体験を踏まえ、業務の見直しと仕事効率化を目的に、マンション理事会と管理フロント両方が幸せになれる『理事会回数見直し術』をご紹介します。
この記事はこんな人にオススメ
この記事は
- 理事会が多すぎてプライベートに支障をきたしている理事会役員の方
- 理事会の回数を減らしたいけど、どうアプローチしていいか分からない管理会社のフロント担当の方
こんな方にオススメです。
「理事会減らしてもいいんじゃない?」って言いたいけど、どう切り出したらいいか分からないわ
昔からのやり方を変えよう、なんて言ったら、何言われるか分からない。言われるぐらいなら今のままで我慢した方が良い。
こんなふうに考えてはいませんか?
確かに昔からのならわしを変えようと思ったら、ちょっとした事でも抵抗があるもの。
(もちろん人にもよりますが)古くからの長老相手なら尚更でしょう。
ですが、やり方を間違わずに進めれば、意外と何とかなったりするものです。
理事会役員さんの殆どは、プライベートの時間を削って理事会に参加されています。
一方、マンション担当フロントも、仕事ではあるものの、掛ける力を別のベクトルに向ければ、それだけ掛ける労力も多くなり、結果的にマンションの質の向上に繋がる結果を生み出せます。
無駄な会議は誰も幸せにしません。
理事会役員も、関わる管理会社フロントも、限りある時間を有効に使えるような施策を一緒に考えていきましょう。
それでは、どうぞ!
『理事会効率化』の結論
簡単に結論をまとめると、
このようになります。
会社でも年次計画があるように、組織運営をする中で年初(または昨年末)に作成する年間計画や5ヶ年の中期経営計画を策定し、それに基づいて進めていくのは定石。
しかし、意外に思われるかもしれませんが、ことマンション管理組合の理事会では、年次計画などを作らず、行き当たりばったりで進めているところが殆どです。
マンションには『長期修繕計画』って修理に関する計画はあるけど、管理に関する計画書ってないのが普通なんだよね。
修繕だけじゃなくて、5年~10年ごとにマンションの管理を見直す計画を作ってもいいと思うんだけどな。
それでは内容について、細かく見ていきましょう。
理事会効率化のススメ
こんな毎月理事会があったらお出掛けできない!なんとか減らせないの?
そう思われながらも渋々出席されている理事会役員の方も多いでしょう。
ですがその理事会、
- 本当に必要なのか、必要でないのか
- 必要なら、どう進めたらいいのか
- 必要でないなら、なぜ開催しているのか
これらをしっかり皆さんで話し合いできてるでしょうか。これらをちゃんと話し合い、理事会役員の皆さんが同じ認識で運営していくのが望ましい姿です。
しかしながら、これらをちゃんと整理していないまま「理事会を減らしたい」なんて言った日には
今までのやり方を変えるつもりか!
今までワシらが間違っていたと言うつもりか!
理事なのに理事会をサボるつもりか!
などと言われ、あらぬ軋轢を生みかねません。
こじらせれば「怠けるために理事会を減らそうと画策している反マンション一派」などという不名誉なレッテルを勝手に付けられ、理事会頻度の見直しを具申すること自体がタブーとなりかねません。
そんな面倒くさいことにならないよう、焦らず、順序立てて話を進める必要があります。
具体的な内容は次のとおりです。
今年度の「やることリスト」を作ろう
マンション管理組合の運営に当たっては、マンション理事会側も管理会社も「なんとなく」の勘どころで毎年運営しているところが殆どです。
私が携わったマンションでも、年次管理計画を作ってるところは指折り数えるぐらいしかありませんでしたね。
計画がなければ、組織運営は「場当たり的」になってくるもの。
そしてその組織に携わる人たち(理事会役員や管理会社)も、「いつ」「どこで」「何を」するべきか見当がつかず、「何を」に対し「どのくらい」の時間を配分していいか分からない状態となります。
つまりは【現状把握ができていない】ということです。
そのためには、まず『やることリスト』を作りましょう。
- 何をやるのか【年度内の課題】
- 具体的に何をするか【課題完了に必要なやること】
- いつまでに完了するか【期限】
まずはこれら1~3の内容を洗い出します。
【具体的なやることリスト作成例】
【今年の課題】 | 【やること】 | 【期限】 |
駐車場の使用細則見直し | 使用細則の改定 アンケート | 来年総会 |
自転車の整理・撤去 | 放置自転車の確認 注意文の配付 自転車撤去の警告 自転車の撤去 | 9月末 |
ゴミのマナー改善 | 注意文の掲示 | 7月末 |
廊下の私物放置問題 | 状況視察 注意文の掲示 注意文の配付 (違反者のみ) | 8月末 |
こんなカンジでOKです。
簡単に箇条書きでもいいので、まずは「やることの洗い出し」から始めましょう。
やることリストの作り方は▼コチラ▼の記事を参考に。
理事会の回数を減らず話題が出たら
理事会を減らして、何かあったらどうするんだ!
なんてセリフがよく出てくるけど、これは中長期の運営内容を把握できてないのが原因の一つだろうね。
その「何か」が何なのか自分でもよく分かってないのに、そんなに「何か」が起こることを危惧してるのは何か不思議ね。
・・・「何か」で何かゲシュタルト崩壊しそうだよ
必要な理事会数を割り出そう
「やること」が洗い出せたら、そこから必要な理事会回数を逆算します。
課題の難易度や理事会以外の居住者の意識調査などで、必要な回数が変わってくるでしょう。
特にマナー問題や啓発活動などは、マンションの居住者属性(単身者が多い、若年層・高年層が多い)やその課題の経緯(前はなかったが最近増えだした、かなり昔から常態化していた)など、マンション固有の事情があるでしょうから、そこは他の役員のみなさんや管理会社とよくよく協議をしてください。
問題解決するときは、十把ひと括りに考えず、過去の経緯や事情をよく精査して考えよう!
他のマンションの事例を紹介してもらいながら解決していくのがオススメよ。ここは管理会社の腕の見せ所ね!
年度内の理事会月を決めよう
年度内に検討することは洗い出せた。必要な理事会回数も粗方分かってきた。
ここまでやれば、次は「いつ理事会を開催するか」の予定表作りです。
具体的には、このように作ってみましょう。
こうやって一覧表にまとめれば、いつ、何をすればいいのかが一目で分かるね
理事会が終わるごとに表を修正していけば進捗管理もできるし、一挙両得!
まとめ!
結論をまとめましょう
こんなふうに進めれば、自ずと年内のやることが見えてきて、業務効率化が図れます。
ここまでくれば・・・
今年は決めなきゃいけない案件はあまりありませんし、いままで毎月理事会してましたけど、試しに来月お休みにしてみます?
そんなに忙しいわけでもなし、いいんじゃない?
という流れになることが期待できます。
しかしながら、ここで一つ注意が必要です。
長年理事会に携わってきた方の中には、理事会を減らすことに嫌悪感を覚える方がいます。
理事会を減らして、何かあったらどうするんだ!
理事会は、集まることに意義があるんだ!
という方が最たる例です。
こういった「人が集まることに意義がある」ということを固く信じている人は、どんな理屈を並べても通じない節があります。
その他にも、理事会自体を『寄合』と捉えて話をすること自体を楽しみにしている人も中にはいらっしゃいます。
理事会の運営は、理事会役員の協力なしには為し得ません。理事会の業務効率化を図ろうとする場合、当然理事会役員の賛同が必要ですから、角が立ちそうな場合は無理をせず諦めましょう。
また、理事会の回数を減らすことが『目的』ではなく、あくまで『理事会の業務を可視化して効率的な運営を行うこと』が本来の目的で、理事会の回数が減るのはその結果でしかありません。
「理事会の回数を減らしたい」と思った時、まずはそれを第一に、話を進めることをお忘れなく。
「理事会の回数を減らすこと」を前面に出すんじゃなく、『業務の効率化を進めること』を目的に話を進めること!
気持ちは分かるけど焦りは禁物。いくら「生産性のない理事会」と思っても、長年の実績を覆すのは簡単なことじゃないよ!
「今年は今までどおり。期の途中から話をし始めて、来年から徐々に減らしていく」といったぐらいの気持ちで取り組んだ方がいいよ。
ではこのへんで。かわぐちろろでした。
マンション管理士かわぐちろろ の【ろろ余談】
【はじめに】のやりとは実話です。
心の声って漏れるんですね・・・